呼吸《いき》が鎮《しず》まりかけると間もなく、わざとらしい驚いた顔付きで問うた。
「……どうしたんだい。急に立上ったりして……」
私は喘《あえ》ぎながら答えた。
「……もし僕が……呉一郎に……この絵巻物を……見せた本人……」
「アッハッハッハッハッ……ワッハッハッハッハッハッ……」
正木博士は、私の云う事を半分聞かぬうちに大袈裟《おおげさ》に吹き出して反《そ》りかえった。
「ハッハッハッハッ。君が加害者で、呉一郎が被害者か。これあいい。探偵小説なら古今の名トリックだが、多分そんな事になるだろうと思っていた。アッハッハッハッハッ。しかしだね。事実はその正反対だったら、どうなるかね、この事件は……」
「……エッ……正反対?……」
「ハッハッハッ。何も君が、そんなに遠慮して、加害者の憎まれ役を引受けなくとも、いいじゃないか。どうせ君と呉一郎とは瓜二つなんだから、御都合によっては吾輩の小手先一つで、加害者側へでも、被害者側へでも、どちらへでも廻せるんだがどうだい。どうせ同じ事なら、被害者側へまわった方が、この事件では得になるんだがドウダイ。アハアハアハアハ……」
私はドシンと椅子に腰を卸
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