物は、呉一郎の伯母の八代子が、土蔵の二階から取って来て隠していたのを、若林が睨んで捲上げて、そのまんま吾輩に引渡したものだから、若林と吾輩以外にこの絵を見た者は君だけだ。裁判所や警察の連中は、八代子が現場の机の上の、この絵巻物が置いてあった所に、自分の鼻紙を拡げておいたので、見事に一パイ喰わされている上に『迷宮破りの若林博士が、事件の真相の説明に窮して迷信を担《かつ》ぎ出した』と云って笑っているそうだ。たしかその当時の新聞の編輯余録といったような欄の中に、素破抜《すっぱぬ》いてあったと思うが……却《かえ》って仙五郎爺から巻物の話を聞いた村の者が、色んな事を云っているそうだ。一郎が夢のお告《つげ》を受けて石切場に行ったら、巻物が高岩の蔭に置いてあったんだとか、その時がちょうど日暮狭暗《ひぐれさぐれ》の逢魔《おうま》が時《とき》だったとか云ってね……又、そんな迷信を担がない連中は、誰かモヨ子に惚れ込んでいた奴が、叶《かな》わぬ恋の意趣晴らしに、古い云い伝えから思い付いて、一郎にコンナ悪戯《いたずら》をしかけたのが、マンマと首尾よく図に当ったんだとか何とか……」
「アッ……」
と私は突然に
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