同様になって倒れているモヨ子の頸部《くび》を、わざわざ西洋手拭で絞め上げたものとすると、この変態性慾は女を殺すばかりが目的でなかった事がわかる。死んでいても構わないから、女の首を絞め付けるという特異な快感を味《あじわ》いたい……という願望のために、コンナ余計な事をしたものと考える事が出来る。……どうだい。一千年|前《ぜん》にいた或る一人の男の変態性慾の心理遺伝が、こんなに細かいところまでも正確に伝わっているとしたら実に面白い研究材料ではないか」
「……………」
「……ところでサテ。こうしてこの発作が済むと、呉一郎は、その屍体をモデルにするつもりで腐るのを待った。それを土蔵の窓から伯母の八代子が覗いた時に、呉一郎は平気で振り返って『モウじき腐ります』云々と云った。この言葉には吾々が聞くと実に一千年間……一千里に亘る時間と空間の矛盾が含まれているんだが、彼、呉一郎自身にとっては、どちらも現在の、眼の前の事であった。彼がモヨ子を絞殺した目的が、そうした大昔の遠方の先祖である呉青秀の、超自然的な心理の満足以外になかった事は、モヨ子の屍体解剖の結果が、情交の形跡なしとあるのを見てもわかる……」
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