、挙動が全く別人のようになる……すなわち心理遺伝の夢遊発作を初める……又はそうした発作を続けて来た人間が同じ暗黒状態の経過の後《のち》に、正気に立帰ったりするので、前に述べた狐憑きなどの場合は、夢中遊行発作の程度が割合に浅いだけに、無意識状態に陥る時間も短かいのが通例になっているのだ。……尚《なお》この仮死の間に於ける栄養作用や、新陳代謝の具合なぞの研究は、この呉モヨ子のモデルに依って、若林が充分な研究を遂《と》げている事と思うし、吾輩も他人の受売りなら多少出来るが、この話には直接の必要がないから略する。いずれにしても呉モヨ子が仮死状態に陥った直接の原因が、呉一郎の夢中遊行から来た暗示であったろうという事は、この若林の手に成った調査書類の文句が云わず語らずの中《うち》に表明している推論で、吾輩も双手を挙げて賛成せざるを得ないところだ」
「……………」
「なお又、これは吾輩一個人としての想像であるが、従来の呉家《くれけ》にはモヨ子のように、女性としての祖先である黛、芬、両夫人から来た心理遺伝をあらわした婦人の話が一つも残っていないようである。又、この絵巻物を警戒して、人に見せないようにし
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