も知れないが心理遺伝の発作と消滅の前後に、仮死状態や無意識、昏睡状態なぞいうものが伴う例は古来、幾多の記録や伝説に残されているので、この方面の専門的研究眼から見ると、少しも不思議な事ではないのだ。……すなわち昔はこれを『神憑《かみうつ》り』とか『神気《かみげ》』とか『神上《かみあが》り』とか称していたもので、甚《はなはだ》しいのになるとその期間が余り長いために、真実《ほんとう》に死んだものと思って土葬した奴が、墓の下で蘇った……なぞいう記録さえ珍らしくない。能楽『歌占《うたうら》』の曲の主人公になっている伊勢の神官、渡会《わたらえ》の某《なにがし》は三日も土の中で苦しんだために白髪《しらが》となって匐《は》い出して来た……なぞいうのは、そんな伝説の中でも最も有名な一つで、これを精神科学的に説明すると電気のスイッチを一方から一方へ切り換える刹那《せつな》に生ずる暗黒状態みたようなものだ。勿論その気持の変化の強弱、又はその人間の体質、性格等によって時間の長短の差はあるが、普通の場合、突然の驚きに似た卒倒と、それに引続く身神《しんしん》の全機能の停止があって後《のち》に、やがて息を吹き返すと
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