やはり天才肌の青年……殊《こと》に頭の優れた芸術家なぞに在り勝ちの超自然的な愛慾、兼、性慾だ。……それから今一つ……嘆美の極はこれを破壊するにあり。そうしてその醜怪な内容をドン底までも曝露さして冷やかに観察するに在り……という芸術慾のドン詰まりと、この四ツの慾望が白熱的の焦点を作ってこの計画の中に集中されていた。しかもその強烈な慾求を呉青秀はやはり純忠純誠の慾求として錯覚していたものと考えられるのだが、そうした呉青秀の心理状態の裏面を、端的に解り易く説明しているものは、矢張《やは》りこの絵巻物の絵だ。腐敗して行く美人の姿だ」
 私の眼の前に又しても最前の死美人の幻覚が現われ出て来そうになった。思わず両手で眼をこすると、鼻の先の絵巻物に視線を落して、表装の中に光っている黄金《こがね》色の唐獅子の一匹を睨み付けた。出て来る事はならぬ……というように……。
「……その死美人の腐敗して行く姿を、次から次へと丹念に写して行くうちに呉青秀は、何ともいえない快感を受け初めたのだ。画像の初めから終りへかけて、次から次へと細かく冴えて行っているその筆致《ふでつき》を見てもわかる。人体という最高の自然美…
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