》じみた身振りをしたり飯櫃《めしびつ》に面《つら》を突込んだり、床下に這い込んで寝たがったりして、眼の玉を釣り上がらせつつ、遠い遠い大昔の先祖の動物心理を発揮するから、狐憑きという名前を頂戴しているんだが、同時にこの狐憑きはソンナ性質と一緒に、何代か前の祖先の人間の記憶や学力なぞいうものまでも発揮する場合が多いのだ。一字も知らなかった奴が狐憑きになるとスラスラと読んだり書いたり、祖先のいろんな才能や知識を発揮したりして人を驚かす例がイクラでもあるから、こんな川柳にまで読まれているんだ」
「ヘエ――。そんなに細かいところまで先祖の記憶が……」
「……出て来るから心理遺伝と名付けるんだ。無学文盲の土百姓が狐に憑《つ》かれると歌を詠《よ》んだり、詩を作ったり、医者の真似をして不治の難病を治したりする。一寸《ちょっと》不思議に思えるが心理遺伝の原則に照せば何でもない。当り前の事なんだ……殊にこの絵巻物は、絵の方が先になっているんだから、それを見ているうちに呉一郎はスッカリ昂奮して、あらかた呉青秀の気持ちになってしまっている。そうしているうちに自分の先祖代々が、何度も何度も発狂する程深く読んで来
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