名吟なんだ」
こう云うと正木博士は得意の色を鼻の先にほのめかしながら、片膝をぐっと椅子の上に抱え上げた。
「……ソ……それが……どうしたんです」
「ドウしたんじゃない。この川柳があらわしている心理遺伝の原則を呑み込んでいない以上、シャイロック・ホルムスとアルセーヌ・ルパンのエキスみたいな名探偵が出て来ても、この疑問は解けっこない」
冷やかにこう云い放った正木博士の口から、小さな煙の輪が一ツクルクルと湧き出して、私の頭の上の方へ消えて行った。私は又、眼をパチパチさした。
……狐憑き……落つれば……落つれば……もとの無筆……もとの無筆……
と心の中で繰り返したが、わからないものはいくら考えても解らなかった。
「若林先生は知っているんですか……その理屈を……」
「吾輩が説明してやった。感謝していたよ」
「……ヘエ……どういう訳なんで……」
「どういう訳ったって……こうだ。いいかい……」
正木博士はユッタリと椅子の背に身を凭《も》たせて足を長々と踏み伸ばした。
「……この川柳は狐憑きが、心理遺伝の発作である事を遺憾なく説明しているのだ……すなわち狐憑きはその発作の最中に妙な獣《けもの
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