「……じゃ誰か……読んで聞かせた……」
 と云いも終らぬうちに私は愕然として慄《ふる》え上がった。
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……誰か……何者かが傍に附いていたんだ……今しがた私が聞いたような説明をして聞かせた奴が居たんだ……居たんだ……そいつが……そいつが……そいつは……そいつは……
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 こう思ううちに一しきり高まっていた心臓の鼓動が又ピッタリと静まった。そうして、それと同時に正木博士の厳粛な眼の光りが次第次第に柔らいで行くのを見た。一文字に結ばれた唇が見る見る弛《ゆる》んで、私を憫《あわ》れむような微笑《ほほえみ》にかわって行くのを見た……と思うと、無雑作に投げ出すような言葉が葉巻の煙と一緒に飛び出した。
「……『狐憑《きつねつ》き、落つればもとの無筆《むひつ》なり』……という川柳を知っているかね君は……」
 私は面喰った。不意に横頬に何か見えないものをタタキ付けられたような気持ちがして、暫く眼をパチパチさせていた。
「……そ……そんな川柳は知りません」
「……フ――ン……この句を知らなけあ川柳を知っているたあ云えないぜ。柳樽《やなぎだる》の中でもパリパリの
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