ずみ縮んでピシャンコになってしまい、肋骨《あばらぼね》や、手足の骨が白々と露われて、毛の粘り付いた恥骨《ちこつ》のみが高やかに、男女の区別さえ出来なくなっている。
最終の第六図になると、唯、青茶色の骨格に、黒い肉が海藻のように固まり附いた、難破船みたようなガランドウになって、猿とも人ともつかぬ頭が、全然こっち向きに傾き落ちているのに、歯だけが白く、ガックリと開いたままくっ付いている。
……私は嘘を記録する事は出来ない。あとから考えても恥かしい限りであるが、私はおしまいの方ほど急いで見た。
勿論、この絵巻物を開いた最初のうちこそ、一種の反抗心と共に落ち付いた態度を保っていたが、死美人の絵が出て来ると間もなくそんな気持ちはどこへやら消えうせて、巻物を開き進める手がだんだんと早くなるのを自覚しながら、どうしてもそれを押し止める事が出来なくなった。それでも眼の前の正木博士に笑われてはいけないと思って一所懸命に息を詰めて、出来るだけ念を入れて見たつもりであったが、それでもとうとうしまいには我慢出来なくなって、第六番目の絵なぞは殆ど眼の前を通過させただけと云ってよかった。画面から湧き出して来
前へ
次へ
全939ページ中741ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング