悸が高まって……。
そこに横たわっている裸体婦人の寝顔……細い眉……長い睫毛《まつげ》……品のいい白い鼻……小さな朱唇……清らかな腮《あご》……それはあの六号室の狂美少女の寝顔に生き写しではないか……黒い、大きな花弁《はなびら》の形に結《ゆ》い上げられた夥しい髪毛《かみのけ》が、雲のように濛々《もうもう》と重なり合っている……その鬢《びん》の恰好から、生え際のホツレ具合までも、ソックリそのままあの六号室の少女の寝姿を写生したものとしか思われないではないか…………。
しかしこの時の私には「何故」というような疑問を起す余裕がなかった。その寝顔……否、眠っているかのように見える表情の下から、微妙な彩色や線の働らきによって見え透いて来る死人の相好《そうごう》の美くしさ……一種|譬《たと》えようのない魅力の深さに、全霊を吸い寄せられ吸い奪われてしまって、今にもその眼がパッチリと開きはしまいか。そうして最前のように「アッ……お兄様ッ……」と叫んで飛び付いて来はしまいか……というような、あり得べからざる予感に全神経を襲われつづけていたのであった。瞬《まばたき》一つ出来ず、唾液一つ呑み込み得ないま
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