いるがね」
「何だかお伽話《とぎばなし》みたいになりましたね」
「ウム。何となく夢幻的なところがやはり支那式だよ。それから芬子さんの涙ながらの物語りで詳しい事情を聞いた船中の者は、勃海使を初め皆、満腔の同情を寄せた。一様に呉氏の生き甲斐のない姿を憐れみ、且《か》つ芬夫人の身の上に同情して、手厚い世話をしながら日本に連れて行く事になったが、その途中のこと、船中が皆眠って、月が氷のように冴え返った真夜半《まよなか》に、呉青秀は海に落ちたか、天に昇ったか、二十八歳を一期《いちご》として船の中から消え失せてしまった。……芬夫人は時に十九歳、共に後を逐《お》おうとして狂い悶えたが、この時、既に呉青秀の胤《たね》を宿して最早《もはや》臨月になっていたので、人々に押し止められながら辛《かろ》うじて思い止《とど》まると、やがて船の中で玉のような男の児《こ》を生んだ」
「やっと芽出度《めでた》くなって来たようですね」
「ウン、船中でも死人が出来て気を悪くしているところへ、お産があったと聞いたので喜ぶまい事か、手《て》ん手《で》に色々なお祝いの物を呉《く》れて盛に芽出度がった上に、勃海使の何とかいう学者が
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