き決心を固めた……と告白しているが、実は大馬力をかけたお惚気《のろけ》だね」
「……まさか……」
「イヤ。それに違いないんだ。後で説明するがね……そこで呉青秀が懐《ふところ》にしていた姉の遺品《かたみ》の宝玉類を売り払って、画像だけを懐に入れて、妖怪《ばけもの》然たる呉青秀の手を引きながら、方々を流浪したあげく、その年の暮つかた、どこへ行くつもりであったか忘れたが舟に乗って江《こう》を下り、海に浮んだ。すると暴風雨数日の後《のち》、たった二人だけ生き残って絶海に漂流する事又十数日、遂《つい》に或る天気晴朗な払暁《あけがた》に到って、遥か東の方の水平線上に美々しく艤装《ぎそう》した大船が、旗差物《はたさしもの》を旭《あさひ》に輝やかしつつ南下して行くのを発見した。そこで息も絶え絶えのまま、手招きをして救われると、その美しい船の中で、手厚い介抱を受ける事になったが、この船こそは日本の唐津を経て、難波《なにわ》の津に向う勃海使《ぼっかいし》の乗船であった。勃海国というのはその時分、今の満洲の吉林《キーリン》辺にあった独立国で、時々こうして日本に貢物《みつぎもの》を持って来た事が正史にも載って
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