の手にかかって、お亡くなりになったのだ……そうしてお義兄《にい》様は妾を姉さんの幽霊と間違えていらっしゃるのだ……という事がヤット解りましたから、お義兄《にい》さまの惑いを晴らすために、急いで自分の一帳羅《いっちょうら》服に着かえてしまったのです。……ですが一体お義兄《にい》さまは、どうして黛子姉さんをお殺しになったのですか。そうして今日が日まで一年もの長い間、どこで何をしていらっしたんですか……と涙ながらに詰め寄った」
「ハア……しかし何ですね。……その前にその芬子という妹は、何だってソンナ奇怪《おかし》な真似をしたんでしょうか。姉さんの着物を着て、その夫に仕える真似事をしたりなんか」
「ウンウン……その疑問も尤《もっと》もだ。呉青秀もやっぱり同感だったろうと思われるね。それともまだ開《あ》いた口が塞《ふさ》がらずにいたのかも知れないが、何の答えもあらばこそだ。依然として芬子嬢の顔を見下したまま唖然《あぜん》放神の体《てい》でいると、やがて涙を拭いた芬子嬢は、幾度もうなずきながら又|曰《いわ》く……御もっともで御座います。これだけ申上げたばかりではまだ御不審が晴れますまいから、順序を
前へ
次へ
全939ページ中719ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング