れるし、時折りは顔料《えのぐ》や筆なぞを仕入れに行ったりして誤魔化《ごまか》していましたので、近所の人々は皆《みんな》……この天下大乱のサナカに、そんなに落ち付いて絵を描《か》くとは、何という豪《えら》い人だろうと……眼を丸くして感心していた位です。……妾はそんなにまでして苦心しいしい、お二人のお留守番をして、お帰りになるのを今か今かと待ちながら、この一年を過したのですが、今日も今日とてツイ今しがた、買物に行って帰って来ますと、この室《へや》に物音がします。その上に誰か大きな声でオイオイ泣いているようなので、怪しんで覗いて見たら、お義兄《にい》さまが死のうとしていらっしゃるのでビックリして、そのままの姿で抱き止めたのです。それから気絶なすった貴方を介抱しておりますと、弛《ゆる》んだ貴方の懐中《ふところ》から、固く封じた巻物らしい包みと、姉さんが大切にしていた宝石や髪飾りが転がり出して来ました。それと一緒に貴方が夢うつつのまま、どこかを拝む真似をしながら……黛よ。許してくれ。お前一人は殺さない……と泣きながら譫言《うわごと》を仰言《おっしゃ》ったので、サテは姉さんはモウお義兄《にい》さま
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