立ててお話しましょうが……お話はずっと前にさかのぼって丁度去年の暮の事です。……姉さんが宮中を去ってからというものは、外《ほか》に身寄り便《たよ》りのない妾の淋しさ心細さが、日に増し募《つの》って行くばかりでした。そのうちに又、ちょうど去年の今月の、しかも今日の事……大切な大切なお義兄《にい》さま達御夫婦が、外《ほか》ならぬ妾にまでも音沙汰《おとさた》なしで、不意に行衛《ゆくえ》を晦《くら》ましておしまいになったと聞いた時の妾の驚きと悲しみはどんなでしたろう。一晩中寝ずに考えては泣き、泣いては考え明かしましたが、思いに余ったその翌る日の事、楊貴妃様から暫時《しばし》のお暇を頂いた妾は、お二人の行衛を探し出すつもりで、とりあえずこの家に来て見ました。そうして妾を見送って来た二人の宦官《かんがん》と、家《うち》の番をしていた掃除人を還《かえ》してから、唯一人で家内の様子を隈なく調べてみますと、姉さんは死ぬ覚悟をして家を出られたらしく、結婚式の時に使った大切な飾り櫛を、真二つに折って白紙に包んだまま、化粧台の奥に仕舞ってあります。けれども義兄《にい》さんの方は、そんな模様がないばかりか、絵を
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