だね。新品卸し立ての妻君を犠牲にして計劃した必死の事業が、ミスミス駄目になって行くのだから……号哭《ごうこく》、起《た》つ能《あた》わずとあるが道理《もっとも》千万……遂《つい》に思えらく、吾、一度天下のために倫常《りんじょう》を超ゆ。復《また》、何をか顧《かえりみ》んという破れかぶれの死に物狂いだ。そこいら界隈の村里へ出て、美しい女を探し出すと、馴《な》れ馴れしく側へ寄って、あなたの絵姿を描いて差上げるからと佯《いつわ》って、山の中へ連れ込んで、打ち殺してモデルにしようと企てたが……」
「ウワア……トテモ物騒な忠君愛国ですね」
「ウン。こんな執念深さは日本人にはないよ。けれども何をいうにも、ソウいう呉青秀の風釆が大変だ。頬が落ちこけて、鼻が突《と》んがって、眼光|竜鬼《りゅうき》の如しとある。おまけに蓬髪垢衣《ほうはつこうい》、骨立悽愴《こつりゅうせいそう》と来ていたんだから堪《たま》らない。袖を引かれた女はみんな仰天して逃げ散ってしまう。これを繰り返す事|累月《るいげつ》。足跡遠近に及んだので、評判が次第に高くなって、どの村でもこの村でも見付け次第に追い散らしたが、幸いにして山の中
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