。さっきの縁起書とは大違いだ」
「……呉青秀は、こうして十日目|毎《ごと》にかわって行く夫人の姿を、白骨になるまで約二十枚ほどこの絵巻物に写し止《とど》めて、玄宗皇帝に献上し、その真に迫った筆の力で、人間の肉体の果敢《はか》なさ、人生の無常さを目の前に見せてゾッとさせる計劃であったという。ところが何しろ防腐剤なぞいうものが無い頃なので、冬分《ふゆぶん》ではあったが、腐るのがだんだん早くなって、一つの絵の写し初めと写し終りとは丸で姿が違うようになった。とうとう予定の半分も描《か》き上げないうちに屍体は白骨と毛髪ばかりになってしまった……というのだ。……或は科学的の知識が幼稚なために、土葬した屍体の腐り加減を標準にして計劃したのかも知れないが……何にしても恐ろしい忍耐力だね」
「あんまり寒いから火を焚《た》いて室《へや》を暖めたせいじゃないでしょうか」
「……ア……ナルホド。暖房装置か、そいつはウッカリして気が付かずにいた。零下何度じゃ絵筆が凍るからね……とにかく忠義一遍に凝《こ》り固まって、そんな誤算がある事を全く予期していなかった呉青秀の狼狽《ろうばい》と驚愕は察するに余《あまり》あり
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