…と来たね」
「ウワア。やわらか過ぎます。……それじゃア」
「イヤ。真面目に聞いてくれなくちゃ困る。チャン公一流のヨタなんかコレンバカリも混っていないんだぜ。これがあの四五年前に流行した『ドコマデモ』という俗謡の本家本元なんだ。チャント記録に残っているんだ」
「……ヘエ。そんなもんですかね」
「そうだとも。第一お前さんと一緒ならサハラだのナイヤガラ見たような野暮《やぼ》な処へは行かない。一緒に天に昇って並んだ星になって、下界の人間をトコトンまで羨やましがらせましょうというんだから遣り切れないよ。覗いて聞いていた奴もタイシタ奴に違いないが……」
「しかし、それが絵巻物とドンナ関係があるんですか」
「大ありだ。まあ急《せ》かないで聞き給え。大陸の話だからナカナカ焦点が纏まらないんだよ。いいかい……こんな文化式の天子だから玄宗皇帝は芸術ごとが大好きで、李太白なぞいう、呑んだくれの禿頭《とくとう》詩人を贔屓《ひいき》にして可愛がる一方に、当時、十九か十八位の青年進士呉青秀に命じて、遍《あま》ねく天下の名勝をスケッチして廻らせた。すなわち居ながらにして天下を巡狩《じゅんしゅ》しようという、有難い
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