思い浮めては考え合せ、考え合せては分解してみたのであった。
[#ここから1字下げ]
……正木、若林の両博士は、表面上無二の親友のように見せかけているが、内実は互いに深刻な敵意を抱き合っている仇讐《かたき》同志である。
……その仲違《なかたが》いの原因は、私と呉一郎を実験材料とした精神科学に関する研究から端を発しているらしく、今はその闘いが、白昼公々然とこの教室で行われる位にまで高潮して来ている。
……しかし、私とあの六号室の少女とを無理にも結婚させようとする意志だけは二人とも奇妙に一致しているようである。
……しかも、万に一つ私が、あの呉一郎と同一人か、もしくは呉一郎と同名、同年の、同じ姿の青年であって、あの少女が又、呉モヨ子に相違ないとすれば、実に変テコな事になるのだ。すなわち私達二人をその結婚の前夜に、或る精神科学的の犯罪手段に引っかけて、このような浅ましい運命に陥れたものは、この二人の博士以外に在り得ないように思われるではないか。……コンナ矛盾した事が又とほかに在り得ようか。
……尤《もっと》も強いて解釈をつけようとすれば付かぬ事もない。二人の博士は何等かの学理研究の目的で一人の
前へ 次へ
全939ページ中690ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング