れてしまったのであった。石のように固くなって、切口上で返事をしたのであった。
「え……可哀想とは……思いました」
 正木博士はこう聞くとサモ満足気に幾度《いくたび》も幾度もうなずいた。その態度を見ると正木博士はこの時に私があの少女を恋しているものと思い込んでしまったらしかったが、それを打ち消すだけの心の余裕も私は持たなかった。何とかして誤解をさせぬようにとヤキモキ考えているうちに正木博士は、なおも悠々と念入りに点頭《うなず》き直してしまった。
「そうだろうともそうだろうとも。美しいと思ったのは、すなわち恋した事だからね。そうでないという奴は似非《えせ》道徳屋……」
「……ソ……そんな乱暴な……セ……先生……誤解です……」
 と私は周章《あわ》てて半布《ハンケチ》を持った手をあげつつ叫んだ。
「……異性の美しさを感ずる心と、恋と、愛と、情慾とはみんな別物です。そんなのをゴッチャにした恋は錯覚の恋です……異性に対する冒涜です……精神科学者にも似合わない乱暴な云い草です……無茶苦茶です。それは……」
 というような反駁の言葉を一時に頭の中で閃《ひら》めかしながら……。しかし正木博士はビクとも
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