、同時に止まったように思った。
 その時に正木博士に指《ゆびざ》されていた青年……呉一郎のうしろ姿は、あたかも、何等かの暗示を受けたかのように、フッとこちらを振りかえった。私達の覗いている硝子《ガラス》窓越しに、私とピッタリ視線を合わした……と……その顔に、今まで含まれていたらしい微笑がスーと消え失せて……今朝《けさ》程、あの湯殿の鏡の中で見た私の顔と寸分違わない、ビックリしたような表情にかわった。……顔の丸い、眼の大きい、腮《あご》の薄い……と思う間もなく、又も、ニコニコと微笑を含みながら、しずかに老人の畠打ちの方に向き直ってしまった……ように思う……。
 ……私はいつの間にか両手で顔を蔽《おお》うていた。
「……呉一郎は……私だ……私は……」
 と叫びつつヨロヨロとうしろに、よろめいた……ように思う……。
 それを正木博士が抱き止めてくれた。そうして噎《む》せかえるほど芳烈な、火のように舌を刺す液体をドクドクと口の中へ注ぎ込んでくれた……ように思うが、何が何であったかハッキリとは記憶しない。唯、その時に正木博士が、私の耳の傍で怒鳴《どな》っていた言葉だけが、切れ切れに記憶に残ってい
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