何か見えているかね……解放治療場の中に……」
私は正木博士の尋ね方が何となく異様なので、静かにその瞳を見返した。
「ハイ……狂人が十人居るようです」
「……ナニ……狂人が十人……」
と慌てた声で云いさした正木博士は、何かしら余程驚いたらしく、今一度グッと私を睨み付けた。
その視線を横頬に感じながら、私は又も解放治療場内をふり返って、呉一郎のうしろ姿を凝視しはじめた。……今にもこっちを振り向いて、私と顔を合わせそうな気がして……そうしたら、何かしら大変な事が起りそうに思えて……身体《からだ》じゅうが自然《おのず》と固くなるように感じつつ……。
「ウーム……」
と正木博士は私の横で気味のわるい程ハッキリと唸った。
「あの中で狂人が遊んでいるのが、アリアリと見えるかね君には……」
私は無言のままうなずいた。いよいよ奇妙な質問の仕方だとは思いながら、別段気にも止めないで……。
「フ――ム。そうして人数はやっぱり十人いるというのかね」
私は又、うなずきつつ振り返った。
「ハイ。キッチリ十人おります」
「……ウ――ム……」
と正木博士は唸った。真黒い眼の球《たま》を奥の方へ凹《へこ》
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