うにヒッソリと静り返っている。その薄気味わるさ……こころみに人数を数えてみると、やはり遺言書に書いてある通りの十人で、殖《ふ》えても減ってもいないのはどうした事であろう。
 しかも、更に不思議な事には、その何も変った事のない、静かにハッキリした光景を見下しているうちに、この十人の狂人の心理遺伝を利用して、正木博士が仕掛けておいたという精神科学的の大爆発……正木博士の辞職の原因となった大惨事が、もうじきに初まろうとしている……それは昨日の事でもなければ一昨日《おととい》の事でもない。たった今、眼の前に起りかけている事実なのだ……という予感がして、しようがないのであった。否……場内に居る狂人ばかりではない。向うの屋根の上に二本並んで、藍色の大空を支えている赤煉瓦の大煙突……その上から、たった今吐き出され初めた黒い黒い煤煙のうねり……その上にまん丸くピカピカ光っている太陽までもが、何等かの神秘的な精神科学の原則に支配されつつ、時々刻々にその空前絶後の大事変の方へ切迫して行きつつあるのではないか……というような底知れぬ冷やかな、厳粛な感じが、頻《しき》りに首すじの処へ襲いかかって、全身がゾクゾ
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