落したのを気付かぬまま、威張ってあるきまわり……それを拝んでいた髯面《ひげづら》の大男は、拝みくたびれたかして、砂の中に額《ひたい》を突込んで眠り……小男の演説家は煉瓦塀に拳固を押し当てて祈り……痩せた青黒い少女は、老人の作った新しい畝に植えるものを探すらしく、キョロキョロと場内を物色してまわっている。そのほかの連中も、その位置が違っているように思えるだけで、やっている仕事の意味は、最前読んだ遺言書の説明とすこしも違わない。唯……最前から歌を唄って踊りまわっていた筈の、舞踏狂らしいお垂髪《さげ》の女学生が、私たちの立っている窓のすぐ下に、肩まで手が這入るような砂の穴を掘って、ボール紙の王冠と、松の枯れ枝を利用しながら、小さな陥穽《おとしあな》を作りかけているのが、少々脱線しているように思われるだけである。しかし、いずれにしても正木博士がたった今話した、昨日《きのう》の正午の大惨事というのは、いつ、どこで、どの狂人が起したものか、そんな形跡さえ見えないのが、私には不思議に思われて仕様がなかった。舞踏狂の少女が歌をやめたせいか、それとも硝子《ガラス》窓越しに眺めているせいか、すべてが影のよ
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