吾輩が遅かれ早かれこの危険千万な放れ業式の解放治療の実験を切り上げて、その内容を学界に発表すると同時に、行衛を晦《くら》ますであろう事を、ずっと前から察していたんだね。しかも、それと同時に、この姪《めい》の浜《はま》の花嫁殺し事件も、吾輩一人の実験材料に使い棄てて、あとから誰が見ても犯罪事件と見えないようにして、学界に報告するであろう事までもチャンと看破していたんだね。そこで彼奴は全力を挙げて電光石火式に事を運んだ。そうして吾輩がまだ行衛を晦《くら》まさないうちに吾輩を押え付けてギャフンと参らせようと、巧《たく》らんだ訳だ。
……彼奴は吾輩が昨夜からここに居据《いず》わりで居る事を、今朝《けさ》本館の玄関を這入ると同時に見貫《みぬ》いていたに違いない。そうして何等かの策略で吾輩を凹《へこ》ませるために、君をここへ連れて来るんだな……と気が付いたから、ドッコイその手は桑名《くわな》の何とかだ。一つ驚かしてやれと思って、その遺言書や、焼き残りの書類をそこに置きっ放しにしたまま、ウイスキーの瓶と一緒に姿を消してしまったのだ。無論窓から飛び出したのでもなければ、向うの扉から抜け出した訳でもな
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