に捲込まれるに到ったか……という事が君にはテンキリ解っていない筈だからね。ハッハッハッ……しかし心配し給うな。吾輩がこれから話すことを聞いておれば、一切の疑問が櫛の歯で梳《す》くようにパラリと解けて来る。その話というのは、少々重複するかも知れないが、その吾輩の遺言書の続きになる話で、この実験に関する吾輩と若林の過去の秘密から、だんだんと呉一郎の心理遺伝の内容に立ち入って行って、一番おしまいに君自身が何者であるかという事が、やっとわかる段取りになるのだ。尤《もっと》もその途中で君自身が自分の身の上を感付くとすれば止むを得ない。話はそれ切りの芽出度《めでた》し芽出度しになる訳だが、その時はその時として、まずそれまでのお楽しみとして聞いていたまえ。……しかし、もう一度念を押しておくが、もうこの上に尚《なお》、錯覚を起したりしちゃいけないよ。吾輩が幽霊だとか、吾輩が死んでから一箇月目だとかいうような飛んでもない気もちになってくれちゃ困るよ。ハッハッハッ、いいかい。これから先の話を聞いてそんな錯覚や妄想に陥ると、もう永久に取り返しが付かなくなるかも知れないからね。いいかい……ほんとに大丈夫かい。
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