汗をハンカチで拭いつつ、又も腰を落ちつけてため息した。そうして、正木博士の顔を一心に凝視しつつ、その黒ずんだ、気味のわるい唇が動き出すのを、生命《いのち》がけの気持ちで待っていなければならぬような心理状態に陥ってしまったのであった。……それは恐らく、この二人の博士が、全力というよりも寧《むし》ろ死力を竭《つく》して奪い合っているほどの怪奇を極めた精神科学の実験そのものの魅力のために私の魂がもう、スッカリ吸い付けられてしまっていたせいかも知れない……その話の底を流るる形容の出来ない不可思議な真実性が、グッと私の心臓を引っ掴んで、云い知れぬ好奇心の血を波打たせているせいかも知れない。……なぞと……そんな事を考えつつ茫然として、眼の前の空間を凝視している私の耳元に、又も咳一咳《がいいちがい》した正木博士の声が、新しく、活《い》き活きと響いて来た。
「ハハハハハハ……どうだい。もうわかったかい、錯覚の原因が……ウン。わかった。……併《しか》しまだ少々解らないところが在るだろう。ウン。在る……なかなか頭がいいね。……第一そこに居る君自身が、どこの何という青年で、如何なる因果因縁でもってこの事件
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