……ウンよしよし。それじゃ安心して話を進めるが……」
と云い云い正木博士は消えかけた葉巻に火をつけた。それからポケットに両手を突込んでサモ美味《うま》そうにスパスパと吸立てたが、軈《やが》て葉巻を啣《くわ》え直すと、濛々《もうもう》たる煙の中にヤッコラサと座り直した。
「……ところでだ。……ところで、こいつはいずれ社会に曝露される事と思うから、その時に新聞で見ればわかるが……否《いや》。もう昨日《きのう》の夕刊か、今朝あたりの新聞に出ているかも知れないが……実は、昨日、あの狂人の解放治療場に一大事変が勃発したのだ。つまり吾輩がこの事件を中心とする心理遺伝の実験の結論をつけるために、あの解放治療場の精神病者の群れの中に仕掛けておいた精神科学応用の爆弾の導火線が、この間からジリジリと燃え詰《つま》って来たのが、昨日の正午――すなわち大正十五年の十月の十九日の午砲《ドン》が鳴ると殆ど同時に物の美事に爆発したのだ……ナアニ。種を明かせば何でもない。その導火線というのは一挺の鍬に仕かけてあったに過ぎないのだが、何といっても精神科学を応用した導火線で煙も立てず、火も見えないのだから普通人の眼には
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