吾輩が彼奴の見込み通りに斎藤先生を殺して、その後釜《あとがま》に座って、コンナ実験をこころみて失敗をして自殺を思い立った人間とするかね。その吾輩がどこからか耳を澄ましている前で、だんだんと吾輩がそんな大悪人と認められて来るように……そうして君自身が、その吾輩の当の怨敵である呉一郎自身と認められて来るように、合理的に話が進められて行く。同時に、その吾輩の生涯を賭《と》した事業の功績が、スウーッと奪い去られて行くのを、手も足も出ないまま見たり聞いたりしていなければならない状態に陥って行くとしたら、吾輩にとってコレ以上の拷問があり得るかドウか考えてみるがいい。そのまま黙って自殺するか、飛び出して来て白状するか、二つに一つの道しかないだろうじゃないか……彼奴、若林の遣り口は早い話がザットこんな塩梅《あんばい》式だから堪らないのだ。ドンナ難事件でも一旦彼奴の手にかけるとなると、キットどこからか犯人をヒネリ出して来る。そのために彼奴が『迷宮破り』なぞと新聞に唄われている事実の裏面には、こうした消息が潜《ひそ》んでいるんだよ」
「……………」
「ところがだ。ところが今度という今度ばかりはそう行かない
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