角にも君を落ち付かせようとしたんだ。そうしてゆっくりとこの実験を遂《と》げて、呉一郎としての君の記憶を回復させさえすれば、モウ何もかもこっちのものだと考え付いたんだ。……君が若林の見込み通りに、呉一郎としての過去の記憶を回復しさえすれば、その次に、かく云う吾輩を君の不倶戴天《ふぐたいてん》の親の仇、兼、女房の仇と認めさせる位の事は、説明の仕様で何の雑作もない事になるんだからね。……又、実際吾輩は有難い事に精神科学者なんだから、何も知らない呉一郎に催眠術でもかけて、親や女房を絞め殺させて、これだけの実験材料を拵《こしら》え上げる位の仕事はいつでも出来る自信があるんだからね。この事件の嫌疑者には持って来いの人物なんだ。ね。そうだろう」
「……………」
「そうして、もし又、万が一にもその実験がうまく行かなかったらだね。……つまりそんな書類を君に読ませても、君自身が何にも思い出さなかったら、最後の手段を用いてくれよう……今度は君に気付かれないようにソット姿を隠して、あとからキットここに出て来るに違いないであろう吾輩と君を突き合わせて、吾輩の顔を君が思い出すか出さないか……そうして思い出したら、
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