……そうして午後はもう日が暮れるまで決して出て来ないのだから」
「キットですか」
こう云って正木博士をふり返った呉一郎の眼は何となく不安そうに光った。正木博士は安心せよという風に深くうなずいて見せた。
「キットだよ。……そのうちに今一挺、新しいのを買ってやるよ」
呉一郎は、それでも何かしら不安そうに鍬の上げ下げを凝視していたが、間もなく独言《ひとりごと》のように口籠《くちごも》りつつつぶやいた。
「僕は今欲しいんです……」
「フーム。何故だね……それは……」
しかし呉一郎は答えなかった。ピッタリと口を閉じて、又も、鍬の上下を見守り初めた。
正木博士はその横顔を、緊張した表情でジッと睨みつけた。その表情の中から、何かを探り出そうと思っているらしい。
大きな鳶《とび》の影が、二人の前の砂地をスーッと辷《すべ》って行く。
――――――――――――――――――――
エート……ここまで御覧に入れましたところによって、呉一郎の心理遺伝のソモソモが青琅※[#「王+干」、第3水準1−87−83]《せいろうかん》の玉、水晶の管、珊瑚《さんご》の櫛なぞいうものを身に着ける、古
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