た。
「ここいらに女の屍体が埋まっているのです」
「ウーム。ナルホド。ウーム」
 と正木博士は唸った。そのまま鼻眼鏡ごしに呉一郎の両眼を穴のあく程深く覗き込みつつ、厳格なハッキリした言葉付きで、一句一句、相手の耳に押し込むように問うた。
「……フーム……ナルホド……。しかし……その女の屍骸が、土の下に埋められたのは……イッタイいつの事だね……」
 呉一郎は両手に鍬を支えたまま、ビックリしたように博士の顔を見上げた。その頬の赤い色がスーと消え失せて、唇をムズムズと動かした。
「……イツ……イツ……イツ……いつの事……」
 と魘《おび》えたような口調で繰り返し初めた。そうしてやや暫くの間、茫然として、そこいらを見まわしていたが、やがて何ともいえない淋し気な、途方に暮れた表情にかわった。……パタリと鍬を取り落して、力なく眼を伏せると、ガックリとうなだれて穴を這い上りながら、ソロソロと入口の方へ歩み去った。
 そのあとを見送った正木博士は、腕を組んで会心の笑《えみ》を洩らした。
「果せる哉《かな》だ。心理遺伝が寸分の狂いもなく現われて来るわい。……しかし、もう一辛棒《ひとしんぼう》しなくちゃな
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