しろ手に隠していた汚れたハンカチの包みを解いて、中味を左の掌《てのひら》に取ると、呉一郎の鼻の先に突き出した。その掌の中には、二個月|前《ぜん》にこの解放治療場に這入ると直ぐに拾ったラムネの玉と、きょう掘り出した魚の骨との外に、赤いゴム櫛《くし》の破片と、小指ほどの硝子《ガラス》管の折れたのが光っていた。
「これは、お前が土の中から掘り出したのだろう」
呉一郎は喘《あえ》ぎ喘ぎうなずいた。博士の顔と四ツの品物とを見比べつつ……。
「ウム……ところでこれは何だね。何の役に立つのかね、これは……」
「それは青琅※[#「王+干」、第3水準1−87−83]《せいろうかん》の玉と、水晶の管《くだ》と、人間の骨と、珊瑚《さんご》の櫛です」
呉一郎は別段考えるでもなく、無雑作にそう答えると間もなく、博士の手から四個のガラクタとハンカチを受け取って、石のように固く結び固めると、如何にも大切《だいじ》そうに懐中《ふところ》の奥深く押し込んだ。
「フーム。……ではお前は何のためにそんなに一所懸命になって、土を掘り返しているのだね」
呉一郎は又も土に打ち込みかけた鍬の左手に杖ついて、右手で足の下を指し
前へ
次へ
全939ページ中622ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング