ほど噛み締めつつ、死に物狂いの体で足の下を掘り返しはじめた。
 そのうしろから正木博士が悠々と這入って来た。鼻眼鏡をキラキラと光らせつつ、暫く呉一郎の作業振りを見守っていた。がやがて傍近く歩み寄って来て、鍬を振り上げた右の肩をポンとたたいた。
 呉一郎は驚いて鍬を下し、呆然となって正木博士を振り返りつつ、流るる汗を拭い上げた。
 その隙《すき》を見た正木博士は、眼にも止らぬ早さで、片手を呉一郎の懐《ふところ》に突込んで、汚いハンカチで包んだ丸いものと、最前掘り出した魚の脊椎骨を掴《つか》み出すと、素早く背後《うしろ》に隠してしまった。しかし呉一郎はチットモ気付かぬらしく、なおも流るる汗を拭い上げ拭い上げして眼をしばたたきつつ、穴の中から見上げた。その顔を穴のふちから見下して正木博士はニッコリした。
「今掘り出したのは何だね」
 呉一郎は気まり悪る気に顔を赤くしつつ、左手の食指を博士の鼻の先に突き出して見せた。博士が鼻眼鏡を近づけてみると、その指の頭には、女の髪の毛が一本グルグルと捲きつけてあった。
 正木博士は、それが何を意味するかを知っているらしく、真面目な顔でうなずいたが、今度はう
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