ば私の力で、この少年の頭を回復させて、事件の真相に関する記憶を取出してみたいと思うのですが、如何でしょうか……」

 【字幕[#「字幕」は太字]】 解放治療場に呉一郎が現われた最初の日(大正十五年七月七日撮影)
 【映画[#「映画」は太字]】 解放治療場のまん中に立った五六本の桐の木の真青な葉が、真夏の光りにヒラヒラと輝いている。
 その東側の入口から八名の狂人が行列を立てて順々に這入って来る。中には不思議そうに、そこいらを見まわしている者もあるが、やがてめいめいに取りどり様々の狂態を初める。
 その一番最後に呉一郎が這入って来る。
 如何にも憂鬱な淋しい顔で、暫くの間呆然と、四方の煉瓦塀や、足元の砂を見まわしていたが、そのうちにフト自分の足の下の砂の中から何やら発見したらしく、急に眼をキラキラと光らして拾い上げると、両手の間に挟んでクルクルと揉《も》んでから、眩《まぶ》しい太陽に透かしてみた。
 それは青い、美しいラムネの玉であった。
 呉一郎は真正面《まとも》に太陽に向けた顔をニッコリとさせながら、その玉を黒い兵児帯《へこおび》の中にクルクルと捲き込んだが、大急ぎで裾をからげて前に
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