きわ》異様に引っ立てているかのように見える。その背後《うしろ》から二人の廷丁が揃って挙手の礼をした。
 正木博士は目礼を返しつつ、葉巻の煙を長々と吹かし終ると、手錠のかかった呉一郎の両手を無雑作に取って引き寄せながら、顔と顔を一尺位に近寄せて瞳と瞳とをピッタリと合わせた。その瞳の底を覗き込みつつ何事かを暗示するかのように……又は呉一郎の眼の光りを、自分の眼の光りで押し返して、その瞳孔の底に押し込むかのように……。こうして二人は眼と眼を合わせたまま暫くの間動かなかった。
 そのうちに正木博士の表情が、どことなく緊張して来た。……立ち会っている紳士たちの表情も、それにつれて緊張して来た。
 しかしその中で若林博士だけは眉一つ動かさずに、青白い瞳を冷やかに伏せて、正木博士の横顔を凝視していた。正木博士の表情の中から、人知れず何ものかを探し求めるかのように……。
 けれども呉一郎は平気であった。正気を失った人間特有の澄み切った眼付きで、何の苦労もなげに正木博士の顔から視線を外《そ》らすと、すぐ横に突立っている若林博士の長大なフロック姿を下から上の方へソロソロと見上げて行った。
 正木博士の表情
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