持のものらしい古|洋傘《コウモリ》と、古|山高《やまたか》が投《ほう》り出してある。その傍に、フロック姿の若林博士が突立っていて、厳《いか》めしい制服姿の警部と、セルずくめの優形《やさがた》の紳士を、正木博士に紹介している。
「大塚警部……鈴木予審判事……いずれもこの事件に最初から関係しておられる方々で……」
正木博士は立ち上って二人の名刺を受取ると、如何にも気軽そうにペコペコと頭を下げた。
「私が、お召しに依って罷出《まかりい》でました正木で……生憎《あいにく》名刺を持ちませんが……」
警部と予審判事は一層威儀を正して礼を返した。
ところへ紺飛白《こんがすり》の袷《あわせ》一枚を、素肌に纏うた呉一郎が、二人の廷丁《ていてい》に腰縄を引かれて這入って来ると、三人の紳士は左右に道を開いて正木博士に侍立《じりつ》した形になった。
呉一郎はその前に立ち止まったまま、黒ずんだ憂鬱な眼付きで室の中をマジリマジリと見まわした。その白い腕や首の周囲《まわり》には大暴れに暴れながら無理に取押えられた時の擦《かす》り傷や、痣《あざ》が幾個《いくつ》となく残っていて、世にも稀な端麗な姿を一際《ひと
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