》、ここで改めて断っておくが、こんな風に事件の核心である心理遺伝の内容を一番あとまわしにして、外側の事実から順々に中味へ中味へと支那料理……オット、シナリオにして行くのは筋がチャンポンという洒落《しゃれ》ではない。この事件に関する吾輩の記録は、悉《ことごと》く、事件そのものが、吾輩の眼界に這入って来た当時のプロットによって並列されているので、この順序を研究しただけでもこの事件の真相はあらかたわかるという……この点に就ては憚《はばか》りながら、極めて科学的な、絶対に誤魔化《ごまか》しの無い俯仰《ふぎょう》天地に恥じざる真実の記録と信ずる次第で……御座います……かね……ヤレヤレ。
【字幕[#「字幕」は太字]】 呉一郎の精神鑑定=大正十五年五月三日午前九時、福岡地方裁判所応接室に於ける。
【映画[#「映画」は太字]】 正木博士は羊羹《ようかん》色の紋付羽織、セルの単衣《ひとえ》にセル袴《ばかま》、洗い晒《ざら》しの白足袋という村長然たる扮装《いでたち》で、入口と正反対の窓に近い椅子の上に、悠然と葉巻を吹かしつつ踏ん反《ぞ》りかえっている。
中央の丸|卓子《テーブル》の上には正木博士所
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