何とのう中味が空虚《から》になっているような手応えでは御座いませぬか。
 ――その時にも虫が知らせたとでも申しましょうか、私は何やら空恐ろしい気持ちが致した事で御座いました。なれども思い切って御本尊様を厨子《ずし》の中から抱え卸して、この方丈に持って参りまして、眼鏡をかけてよくよく検《あらた》めて見ますと、一面の塵埃《ちりほこり》でチョット解り難《にく》うは御座いますが、お像の首が襟の処で切り嵌《は》めになっておりまして、力を入れて揺すぶりますと抜けるようになっております。私はその時に成る程と思いました。そうして轟く胸を押し鎮《しず》めながら廊下伝いに土間に持ち出して音を立てぬように塵を払うて参りまして、この電燈《あかり》の下に毛氈《もうせん》を敷いて、その切嵌《きりは》めの処から御像の首を抜いて見ますと、ちょうどお経筒《きょうづつ》の形に刳《く》り抜いてあります底の方に、古い唐紙《とうし》に包んだ灰があるにはありますが、その灰包みのまん中は、チャント巻物の軸の形に凹《くぼ》んでおります。それを見ますと虹汀様は絵巻物を焼いたと云うてはおかれましたが、別に何か深いお考えがあった事で御座い
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