ましょう。真実は焼かずに、旧《もと》の形のままにして納めておかれましたもので、それを又、誰かが盗んで行ったもの……という事は、もはや疑いもない事と相成りました。ハイ……その外には、周囲《まわり》に詰めてありましたらしい古綿のほか、紙屑《かみくず》一つ見当りませぬ……こちらへお出で下さい。御本尊をお眼にかけましょうから。=後段備考参照[#「後段備考参照」は太字]=
――御覧の通りで御座います……これは私の不念《ぶねん》と申しましょうか、何と申しましょうか……ああ……何か事が起らねばよいがと、胸を痛めました事は一通りでは御座いませなんだ。しかし又、一方から考えますと、もしお千世殿が持って行かれたものとすれば、何の必要があっての事であろうか。又、直方であのような最後を遂《と》げられた後《のち》、今日までの間、誰が隠し持っていたものであろうか。お千世殿の亡き跡を片付けられたお八代さんが、見付け出しておらるれば一言なりとも私に話されぬ筈はないが……なぞと、とつおいつ思案に暮れておりましたところへ、この度《たび》の事が起りましたので、最早《もはや》心も言葉も及ばぬ不思議と申すよりほかに致し方が御
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