ぬでは御座いませんでしたが、それにしても、ちっと腑《ふ》に落ちかねるところもあるようで、空恐ろしい気持ちも致しましたので、真逆《まさか》に御本尊の仏体を破って内部《なか》を見るような者もあるまいと思い思い、そのままに致しておりました。
 ――ところがその中《うち》に、月日の経つのはお早い事で、昨年の秋に相成りますと、ちょうどお彼岸の前の日の夕方の事、お八代殿と、一郎殿と、オモヨさんの三人が連れ立ってお墓掃除に見えました。その時にお八代さんは唯一人でお霊屋《たまや》の掃除をされる序《ついで》に、この方丈に立ち寄られて、茶を飲まれましたが、四方八方《よもやま》のお話の序に……まだちっと早いようじゃけれど、来年の春、一郎が六本松の学校(福岡高等学校)を卒業したならば、すぐに、モヨ子と祝言をさせようと思うが、どうであろうか……という相談で御座いました。お八代さんは、いつもこんな事を披露される前には、必ず私に話をされましたので、私は、まことに結構な事と御返事を致した事で御座いましたが、それから二人で立って本堂の縁側へ出てみますと、彼《か》の山門の横の墓所《はかしょ》の前に、お掃除を仕舞われた学校
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