て、海老茶《えびちゃ》の袴《はかま》を穿《は》かれた千世子殿が、風呂敷包みを抱えたままこの方丈《ほうじょう》に這入って来られまして、唯一人で茶を飲んでおりました私に向って……和尚《おしょう》様……あの御本尊の真黒い仏様の中には美しい絵巻物が這入っておるとの事じゃげなが、ソッと私に見せて下さらぬか……という御話で御座います。この絵巻物の事はこの寺の開山当時の大法要以来、この界隈の名高い話と相成っておりまして、この村でも心得ている者がいくらも居る筈で御座いますから、そんな者からでも聞かれたので御座いましょうか……その時に私は笑いまして……それはもうズットの昔に灰にして終《しま》ってある故《ゆえ》、今は見せとうても見せられぬ……と申しますと……それでも、たった今、あの仏様を私がゆすぶって見たら腹の中でコトコトと音がした。何かキット這入っているに違いない……とお千世殿が云われます。私はビックリ致しまして……そんな事をする者で勿《な》い。仏罰《ぶつばち》が当りますぞ……と叱って返しました……が……お千世殿が帰られてからタッタ一人になりますと扨《さて》、何とのう心配になって参りましたので、コッソリ
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