ゝ、雪影うつらふ氷の刃《やいば》を、抜き連《つ》れ抜き連れ競《きそ》ひかゝる。虹汀さらば詮方《せんかた》なしと、竹の杖を左手《ゆんで》に取り、空拳を舞はして真先《まっさき》かけし一人の刃《やいば》を奪ひ、続いてかゝる白刃を払ひ落し、群がり落つる毬棒《いがぼう》、刺叉《さすまた》を戞矢《かっし》/\と斬落して、道幅一杯に立働らきつゝ人馬の傍《かたわら》に寄せ付けず、其のほか峯打ち当て身の数々に、或は気絶し又は悶絶して、雪中を転び、海中に陥るなど早くも十数人に及びける。
思ひもかけぬ旅僧の手練《てなみ》に、さしもの大勢あしらひ兼ね、白《しら》み渡つて見えたりければ、雲井喜三郎今は得堪《えた》へず、小癪《こしゃく》なる坊主の腕立て哉《かな》。いでや新身《あらみ》の切れ味見せて、逆縁の引導《いんどう》渡し呉《く》れむと陣太刀《じんだち》長《なが》やかに抜き放ち、青眼に構へて足法《そくほう》乱さず、切尖《きっさき》するどく詰め寄り来る。虹汀何とか思ひけむ。奪ひ持ちたる刀を投げ棄て、竹杖|軽《かろ》げに右手《めて》に取り直し、血に渇《かっ》したる喜三郎の兇刃に接して一糸一髪《いっしいっぱつ》を緩
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