打ち向ひて慇懃《いんぎん》に一礼を施しつゝ、咳一咳《がいいちがい》して陳《の》べけるやう、這《こ》は御遠路のところ、まことに御苦労千万也。かゝる不届《ふとどき》の狼藉者を、かほどの大勢にて御見送り賜はる、貴藩の御政道の明らかなる事、まことに感服に堪《た》へたりと云ふ可し。さは云へ折角の御芳志ならば、今|些《すこ》しばかり彼方《かなた》の筑前領まで御見送り賜はりてむや。さすれば御役目|滞《とどこ》り無く相済みて、無益《むやく》の殺生《せっしょう》も御座なかる可く、御藩の恥辱とも相成るまじ。此儀如何や。御返答承り度《た》しと言葉|爽《さわ》やかに笑《えみ》を含めば、一同|呆《あき》るゝ事|稍久《ややしばし》焉。忽《たちま》ちにして雲井喜三郎は満面に朱を注ぎつ。おのれ口の横さまに裂けたる雑言哉《ぞうごんかな》。此間こそ酔ひ痴《し》れて不覚をも取りたれ、今日は吾が刀の錆《さび》までもあるまじ。かゝれや物共、相手は一人ぞ。女のほかは斬り棄つるとも苦しからず。かゝれ/\と刀柄《つか》をたゝけば、応と意気込む覚えの面々、人甲斐《ひとがい》も無き旅僧《たびそう》一人。何程の事やあらむと侮《あなど》りつ
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