みならず、法体《ほったい》と装ひて諸国を渡り、有徳《うとく》の家を騙《たばか》つて金品を掠《かす》め、児女を誘《いざな》ひて行衛を晦《くら》ます、不敵無頼の白徒《しれもの》なる事、天地に照して明らかなり、汝空を翹《かけ》り土に潜《ひそ》むとも今は遁《のが》るゝに道あるまじ、いでや者輩《ものども》、当藩の物を奪ひ去る無法|狼藉《ろうぜき》の坪太はそれよ。女人を誘拐《かどわか》す卑怯未練の賊僧はそれよ。容赦なく踏み込んで召捕れやつと大喝すれば、声を合せて配下の同心、雪を蹴立てゝ勢《きお》ひかゝる。一方は峨々《がが》たる絶壁半天に懸《かか》れり。一面は断崖海に臨みて足もたまらず。背後には繊弱《かよわ》き女人と人馬を控へたり。遁《のが》れつべうもこそあらじと見えつるが、虹汀少しも騒ぐ気色《けしき》なく、負《お》ひ奉りし仏像を馬士《まご》に渡し、網代笠《あじろがさ》の雪を払ひて六美女に持たせつ、手に慣れし竹杖を突き、衣紋《えもん》を繕《つくろ》ひ珠数《じゅず》を爪繰《つまぐ》りつゝ、しづ/\と引返し進み出でければ、案に違《たが》ひし捕手の面々、気先を呑まれてぞ見えたりける。
 その時虹汀、大勢に
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