早世に遭《あ》ふとひとしく乱心仕りて相果《あいは》て候。その後代々の男子の中に、折にふれ、事に障《さわ》りて狂気仕るもの、一人二人と有之《これあり》。その病態《さま》世の常ならず。或《あるい》は女人を殺《あや》めむと致し、又は女人の新墓《にいはか》に鋤鍬《すきくわ》を当つるなぞ、安からぬ事のみ致し、人々|之《これ》を止むる時は、その人をも撃ち殺し、傷つけ候のみならず、吾身も或は舌を噛み、又は縊《くび》れて死するなぞ、代々かはる事なく、誠に恐ろしき極みに侍り。
 かやうの仕儀に候へば、見る人、聞く人、などかは恐れ、危ぶまざらむ。あるひは男子の身にて彼《か》の絵巻物を窺ひたる祟《たた》りと申し聞え、又は不浄の女人の、彼《か》の仏像に近づける障《さわ》りかと怪しむなぞ、遠きも近きも相伝へて血縁を結ぶことを忌《い》み嫌ひ候為め、吾家の血統《ちすじ》の絶えなむとする事度々に及び候。さ候へば、あるひは金銀に明かし、又は人を遠き国々に求めて辛《から》くも名跡を相立て候ひしが、近年に及び候ては下賤|乞食《こつじき》に到るまでも、吾家の縁辺と申せば舌をふるはし身をわなゝかす様に侍り。只今にては血縁の者残
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