別せしを悲しみ、その屍《しかばね》の姿を丹青《たんせい》に写し止《とど》め、電光朝露の世の形見にせむと、心を尽して描き初《そ》めしが、如何なる故にかありけむ、その亡骸《なきがら》みる/\うちに壊乱《えらん》して、いまだその絵の半《なかば》にも及ばざるに、早くも一片の白骨と成り果て候ひぬ。あるじの歎き一方《ひとかた》ならず、遂に狂ほしき心地と相成り候ひしを、亡き夫人の妹くれがし氏《うじ》、いろ/\に介抱し侍りしが力及ばず、遂に夫人と同じ道に入り候ひぬ。その時妹のくれがし氏は、その狂へる人の胤《たね》を宿し、既に生み月に近き身に候ひしが、同じ歎きを悲しびて、やがて又、命《めい》を終らむばかりなりしを、やう/\に取り止め候ひしとか承り及びて候。
 去る程にその折ふし、筑前太宰府、観世音寺《かんぜおんじ》の仏体奉修の為め、京師《けいし》より罷下《まかりくだ》り候ひし、勝空《しょうくう》となん呼ばるゝ客僧《かくそう》あり。奉修の事|終《お》へて帰るさ、行脚《あんぎゃ》の次《ついで》に此のあたりに立ちまはり給ひしが、此の仔細を聞き及ばれて不憫《ふびん》の事とや思《おぼ》されけむ。吾家に錫《しゃく》
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