映っている火影《ほかげ》がフッと暗くなりました……が……これが現在の娘の死骸を眼の前に置いた母親の言えた事で御座いましょうか……それから、お八代さんは急いで梯子から降りて来て、私に「お医者お医者」と云いながら、土蔵《くら》の戸前の処に走って行きましたが……お恥しい事ながら、その時は何の事やら解りませんでしたので、又、解ったにしたところが、腰が抜けておりますから行かれもしません。只、恐ろしさの余り、立っても居てもいられずに慄《ふる》えておりましたようで御座います。
――土蔵の戸前が開きますと、中から若旦那が片手に鍵を持って、庭下駄を穿《は》いて出て来られて、私共を見てニッコリ笑われましたが、その眼付きはもう、平常《いつも》と全く違うておりました。待ちかねていたお八代さんは、その手からソッと鍵を取り上げて、何か欺《だま》し賺《すか》すような風付《ふうつ》きで、耳に口を当てて二言三言云いながら、サッサと若旦那の手を引いて、離家《はなれ》に連れ込んで寝かして御座るのが、私の処からよく見えました。
――それからお八代さんは引返して、土蔵《くら》の二階へ上って、何かコソコソやっているようで御座
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