ジリ寄って行かれました。そうしてここから見えます、あの三ツ並んだ土蔵《おくら》の方角を指さして見せながら、片手をオモヨさんの肩にかけて、二三度ゆすぶられますと、最前から火のように赤うなって身体《からだ》をすぼめていたオモヨさんが、やっとのこと顔をあげて、若旦那と一緒に土蔵《おくら》の方を見ましたが、やがて嬉しいのか悲しいのか解らぬような風付《ふうつ》きで、水々しい島田の頭をチョットばかり竪《たて》に振ったと思うと、首のつけ根まで紅くなりながら、ガックリとうなだれてしまいました……まるで新派の芝居でも見ておりますようなアンバイで……ヘイ……。
――するとその態度《ようす》をジット見て御座った若旦那は、オモヨさんの肩に手をかけたまま中腰になって硝子《ガラス》雨戸越しにそこいらをジロジロと見まわして御座るようでしたが、やがて軒先《のきさき》の夕空を見上げながら、思い出したように白い歯を出して、ニッタリと笑われました。そうして赤い舌を出してペロペロと舌なめずりをさっしゃったようでしたが、その笑顔の青白くて気味の悪う御座いました事というものは、思わずゾッと致しました位で……ヘイ……けれども真逆
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